人間の慣れは怖い
彼女と一緒に暮らすにあたって
お願いされた事がある。
"おしっこは便座をおろし座ってすませる"
という事だ。
理屈も分かるしお安い御用だ。
でも30年近く江戸っ子気質の親父から男は立って小便するもんだと教わっていた僕には、今から練習して習慣化させる時間が必要だ。
先程、おしっこをしにトイレへ向かい、便器と対峙した際に彼女の要望を思い出した。
しかし便座をおろし腰をおろしたが最後
僕の身体はその行動の意味を素早く読み取り、おしっこを忘れ、う○こした。
挙げ句の果て、尿意を思い出した僕は急いで立ち上がり、便座を上げて用を足したのだ。
この一連の流れはかなりスムーズであった。
用を足し終えるまで、僕はこの一連の流れに違和感がなく、トイレから出て自分の犯した罪に気づいた。
人間の慣れは怖いものである。
アルコールから生まれる尿意の激しさの中、僕の30年間の習慣と彼女への愛の戦いが今宵、繰り広げられる。
ろじを