彼とわたしの漂流日記 【韓国映画】
ある男が橋の上から飛び降りて
自殺するシーンが
この映画の幕開けです。
でもその自殺は失敗。
大都会の大きな川のど真ん中にある
無人島へ男は漂着します。
もう一度
彼はこの島で首を吊り
死のうとするのですが恐怖で死ねず
猛烈な便意を催し野グソします。
その最中
目の前にサルビアを見つけます。
あの甘い蜜のする赤い花です。
彼はそっと花に手を伸ばし
その蜜を吸います。
そしてもうひとつ、またひとつと蜜を吸い
次第に涙が溢れ
しまいには号泣します。
このシーンを観て
この映画のチョイスが正解だったと確信しました。
野グソをしながら涙よだれを垂れ流す。
このどうしようもなく
人間臭いシーンが堪りませんでした。
ここから彼のサバイバル無人島生活が始まります。
一方、対岸のマンションには
誰とも会うこともない
3年間引きこもっている女の子が暮らしていました。
その引きこもり生活にも
彼女なりのルーティンが定められており
少しクスッとなりました。
そのルーティンの中に
部屋の窓から望遠カメラでの撮影があり
たまたま無人島にいるあの男を見つけます。
彼を観察するにつれ
彼に興味を持った彼女は
ある晩、ワインボトルに手紙を入れ
その無人島へ投げ入れます。
(彼女がその無人島の上にかかっている橋まで行くシーンも面白い。そしてなんか美しい)
そしてすぐさま自宅へ戻り
彼がワインボトルに気づいたか
カメラを覗きチェックします。
でもそんなすぐ気づくわけねぇですよね。
だって彼女が一方的に彼の存在を知っているだけなのですから。
彼女はその日
彼がワインボトルに気づいてないことを知り
落胆します。
でもその様子はかわいいです。
結局
彼がそのワインボトルの存在に気づいたのは
3ヶ月と17日後。
彼女はずっと
カメラで彼を見ていました。
健気過ぎる(?)。笑
彼は彼女のマンションから見える砂浜に
手紙の返事を書き
ここから2人の妙なやり取りが始まります。
この映画の良いところは
2人の人間臭さと
2人が生きるエネルギーをどんどん取り戻していくところ。
この男もどんどん無人島を自分の住みやすい環境に変えて
また自らも適応していきます。
そんな彼を毎日見ている彼女も
彼とのやり取りで笑顔が増え
外の世界と少しずつ繋がり出します。
しかし
ある日の彼からの砂浜のメッセージが
彼女を動揺させ
返事をしなくなります。
なぜ返事が来ないのかわからない彼。
喪失感から怒りが芽生え
2人の距離は一気に離れます。
そんな中
この街を台風が襲い
今まで島で作りあげてきた物を全て失います。
追い討ちをかけるようにその翌日
数十名の国の役人(?)が島に上陸し
彼を取り押さえ
街へ戻してしまいます。
「ここに僕の居場所はないの?
少しでいいのに。」
彼のその時の心情です。
この映画で
一番印象深い言葉として
僕の中に残りました。
やっと手に入れた自分の場所を
あっけなく奪われてしまった彼には
もう生きる希望はありませんでした。
向かう先はこの街で一番高いビルの屋上。
天国への階段です。
その一部始終をカメラで見ていた彼女。
彼女がその後取った行動が
彼の命を救います。
何もかも失って
もう死んでしまいたくなっても
1つ差し伸べる手があれば
人は生きていけると思います。
そんなことを感じさせてくれる映画でした。
ろじを